現在とこれからの世界・日本のエアライン業界を分析
'11.12.8
※極私的な見方をした表現があると思います、不快に感じられた方がいましたらお詫び申し上げます。
2001年の同時多発テロ・2008年のリーマンショックから3年を経て、再び世界のエアラインの勢力図が変わってきた。
現在とこれからの世界・日本のエアラインと日本の空港について考察していきたい。
・羽田の再国際化はうまく行っているか? →端的に言うと、設備面ではうまく行っているが、運航面(オペレーション的)にはあまりうまく行っていない。 2010年10月より昼・夜それぞれ3万回の国際線発着枠が設けられた。香港及びそれより近い路線に関しては成田の発着が制限される7時〜22時の発着が可能なので、CHINA AIRLINE・EVA・CATHAY PACIFICが新たに路線を開設し、好評を得ている。 しかし香港より遠いdestinationに関しては、22時〜7時の発着しか認められていないため、特に外国のエアラインにとっては使いにくい状態となっており、当初予想されていた航空会社の一部しか乗り入れを行っていない。 国内のエアラインは深夜に出発して早朝に到着するスケジュールを組めるが、海外のエアラインは深夜の到着か早朝の出発のいずれかを行わなければならないからだ。 現に東北大震災の後、真っ先に羽田発着の便を運休する会社が現れた。 現在の縛りのため羽田乗り入れを諦めたエアフランス・ルフトハンザは成田線にA380を導入したり、エアカナダなど成田線を増便する会社も増えている。 ○羽田に乗り入れる可能性のあった会社のなか、2011年12月乗り入れが実現している会社(=○) ・中華航空○ ・エバー航空○ ・キャセイパシフィック航空○ ・タイ国際航空○ ・エア・アジアX(⇒関西線も開設) ・シンガポール航空○ ・英国航空○ ・ヴァージンアトランティック航空× ・エアフランス×(⇒成田線に夏期A380投入で輸送力増強) ・ルフトハンザ航空×(⇒成田線にA380投入・成田-デュッセルドルフ線新規開設で輸送力増強) ・KLMオランダ航空× ・エアカナダ×(⇒成田-カルガリー線開設で輸送力増強) ・アメリカン航空○ ・デルタ航空○ ・ユナイテッド航空× ・ハワイアン航空○(⇒関西線も開設・福岡線も開設予定) ・Vオーストラリア× トランスアエロ航空の復便やLOTポーランド航空のワルシャワ線開設など、もう少しで実現できそうな今後の動向が気になるところだ。 ・日本と航空協定を締結し、いずれかの航空会社が就航を検討している国はかなり多い。 航空協定締結国及び定期航空企業乗入れ状況(国土交通省資料) ベルギーやレバノンなど乗り入れがなくなって久しい国も多いが、一方でイスラエルやエチオピアなど定期便がまったく就航したことがない国も多い。 実際は航空協定をまだ締結していなくても、乗り入れを希望するエアラインも存在している。 ただし枠に余裕ができても全体として未就航エアラインの出足は鈍く、いまだに世界同時不況の影響を引きずっているようである。 そしてここ最近、再び燃料代が漸増傾向にあり、せっかく安くなっていた航空燃料も今後再び航空会社の経営を圧迫していくことになるかもしれない。 そうなると、更にエアラインの出足が鈍くなってしまう。 ここに2010年度以降、成田・羽田を中心に日本に乗り入れてくる可能性のあるエアラインを列挙してみたい。 |
○世界同時不況脱却の起爆剤 いま、自分が思うに世界同時不況を脱却するには、次の方法ぐらいしかないように思われる。 @環境ビジネス(CO2排出権取引はとてもいいアイデアだと思う) A核軍縮 B北朝鮮の民主化 Cアメリカとイスラム世界の融和・関係改善 この4つ全てが近隣国・そしていろいろな国どうしの交流を活発化させ、資本の投入・経済・技術協力など新たな需要を呼び起こし、雇用も増え経済も活性化する起爆剤になると思われる(逆に他のどの手段も効果的であると思えない)。 Aに関して、核開発を模索しているであろう危ない舵取りをするアフマディネジャド大統領率いるイラン、欧米から経済制裁を加えられボーイング・エアバス機の交換部品の調達もままならなくなったのか、2011年11月に日本から撤退していった。 Bに関して、2011年3月に新政府が発足しようやく軍事政権から解放されたミャンマー、アメリカが(中国を牽制するため)ミャンマーに課している経済制裁を解除する用意があるとヒラリー・クリントン副首相が自らミャンマーを訪問し、会談。アンサン・スーチーさんとの会談も歴史的な一幕に見えた。 人口が65億人を越え、全員が満足に食を手にすることができなくなりつつある現在、もう民族・宗教間の対立でいざこざを起こしてる場合ではないと思う。 地球はこれだけの人口をかかえるにはあまりにも狭すぎる。 ホント、過激派とかゲリラとか心無い行動を起こす人たちには悩まされる。 これしか、平和と不況脱却の道はないであろうから…。 不況を抜け出せれば、またいくつかのエアラインが日本に足を伸ばし、再び日本の空港が賑やかになってくることを期待したい。 |
○世界の三大アライアンスはどうか? ・メンバーに恵まれない(メンバーが経営不振に陥ってしまう)ワンワールド 主要メンバーのアメリカン航空が2011年12月にアメリカの民事再生法(=チャプター11)を申請した。 ワンワールドは設立直後にメンバーだったカナディアン航空がエアカナダに吸収されて消滅、メキシコ第2のエアラインだったメヒカーナは経営上の問題で運航停止、JALはJASとの統合後3年で破綻・経営再建中、英国航空とイベリア・スペイン航空はリーマンショックの影響をまともに受け業績が悪化しており、ルフトハンザ、エールフランス-KLMなどの他のレガシーキャリアと差がつき、一方で自国のLCCに足元をすくわれ経営状態がよくない。 ワンワールドからラブコールを送られて加入準備中のマレーシア航空は同じ国のLCC・エアアジアの成長で業績が悪くなっていて、同じく準備中のインド・キングフィッシャー航空はインドのエアライン同士の過当競争で疲弊しており、同じく業績が悪化している。 目下ワンワールドを牽引しているのはキャセイとカンタス、ランチリ、フィンエアーといったところか。 ・インドの航空業界の過当競争 インドは昨今の経済発展と人口増加でGDPとともに航空需要も高い伸びを記録しているが、国営のエアインディアと民間のジェットエアウエィズ・キングフィッシャー航空・他の国内LCC間で競争が激しくなっており、異常な低価格での過当競争となった結果、ほとんどのエアラインで業績が急速に悪化しており、このままでは共倒れも起こりかねないとしてインド政府が財政支援しているほか、運賃設定などに介入すべきか思慮しているようだ。 JALの次、世界で三番目にB787を受領予定のエアインディアも、当初予定していた二十何機のうち半分以下しか「お金が払えず受領できない」とコメントしており、経営が逼迫している様子を伺わせる。 ・着々と世界のエアライン界を席巻しつつあるスターアライアンス こちらはヨーロッパにメジャーから中堅まで多くのメンバーを抱え、世界でも各地域のメジャーキャリア(アジアはスカイチームより質の高い)が参加するスターアライアンス。現在ヨーロッパNO.1の力を発揮するルフトハンザ・ドイツ航空はスイス航空・オーストリア航空・イギリスのbmi・ブリュッセル航空などを参加におく巨大企業となっている。 アメリカはユナイテッド・USエアウェイズ・エアカナダ・TAM、アジアにはANA・アシアナ・タイ・シンガポール、他もニュージーランドや南アフリカ航空など質が高くネットワークの豊富なエアラインが多く加盟しているのも強みといえる。 ・スタアラに追いつけ追い越せのスカイチーム スカイチームは最初はワンワールド・スターアライアンスに出遅れた感があったが、今ではワンワールドを超えネットワーク規模でNO.2のアライアンスに成長した。 設立メンバーのデルタ・エアフランス-KLM・アリタリアなどは質が高いが、スタアラに対抗するあまりアジアで闇雲に加盟メンバーを増やしすぎた感がある。 大韓航空・中国東方航空・中国南方航空・中華航空・ベトナム航空・ガルーダ・インドネシア…以前事故が多発していたエアラインもあるので、加盟を機に安全対策も向上して事故が少なくなることを期待したい。 |
乗り入れの可能性:A…高い B…中程度 C…低い | |
・CSAチェコ航空(C) チェコのナショナルフラッグキャリアでスカイチームに加盟。 長距離用機材としてA310を保有しており、ニューヨークやトロントなど大西洋線にも就航している。 |
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・エルアル・イスラエル航空(B) イスラエルのフラッグキャリアで、ジャンボやトリプルセブン・767といった長距離機材も保有。アメリカはもちろんのこと、東南アジアにも定期就航しており、日本に乗り入れてくる可能性も高い。 ただ出発時の過剰なセキュリティチェックも有名で、CIQは頭を悩ませるかも。 ※航空協定締結国 |
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・エティハド航空(A) UAEのアブダビ首長国をベースとするエアラインで、もともと新規参入組ながらアメリカやヨーロッパ・東南アジアにもネットワークを広げてきている。 B777−300ERに続きA380も発注しており、中東ではエミレイツ・カタールエアウェイズに続く第三の注目株だ。 今後も豊富なオイルマネーを糧に、勢力を拡大しそうなエアライン。 2010年夏スケジュールより、成田に乗り入れを表明している。 ※航空協定締結国 |
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・エチオピア航空(B) エチオピアのフラッグキャリア。 アフリカではヨーロッパ以外にもネットワークを持つ数少ないエアラインの一つ。 香港・バンコクにも乗り入れているので、路線を延長する形で日本に乗り入れてくる可能性がある。 ※航空協定締結国 |
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・ガルフエア(B) バーレーン・アブダビ・カタール・オマーンが共同出資してできたエアラインで、こちらもA340を導入して少しずつネットワークを拡大してきている。 東南アジアにも乗り入れており、日本をはじめ東アジアにも進出してくる可能性あり。 ※航空協定締結国 |
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・イベリア・スペイン航空(A) スペインのナショナルフラッグキャリアでワンワールドメンバー。 数年前まで成田に乗り入れていたが、路線を集約する形でアジアから撤退してしまった。 現在長距離路線はラテンアメリカ路線に特化している。 業績が比較的好調なのか路線の再拡張計画を示しており、その中で近いうちに再び成田へ就航することが検討されている。 ※航空協定締結国 |
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・クゥエート航空(B) クゥエートのナショナルフラッグキャリア。 イラクの侵攻から解放された後確実に復興を遂げており、もともと石油関係で日本の商社とも取引の多い国。 乗り入れてくる可能性あり。 ※航空協定締結国 |
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・ケニア航空(B) ケニアのナショナルフラッグキャリア。 最近トリプルセブンを導入しヨーロッパの複数の都市に就航させるなど発展を続けている。 このエアラインも東南アジアに就航し、アフリカでネットワークを広げている数少ないエアラインの一つである。 |
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・ラン・チリ航空(A) チリのナショナルフラッグキャリアでワンワールドメンバー。 衰退が続く南米のエアラインの中で成長を続けている希少な存在で、ペルーやアルゼンチンなどにも子会社を持つ。 ヴァリグ・ブラジル航空が撤退した今、南米から唯一の乗り入れエアラインとしてやってくるかもしれない。 |
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・LOTポーランド航空(A) ポーランドのナショナルフラッグキャリアでスターアライアンスに加盟した。 共産体制から解放後少しずつ成長を続けており、現在B767でアメリカやカナダに飛んでいる。 2010年夏スケジュールより、成田へ週3便で乗り入れすることが検討されている。 B787も発注しており、今後もネットワークを拡大する可能性のあるエアライン。 ※航空協定締結国 |
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・マレブ・ハンガリー航空(C) ハンガリーのナショナルフラッグキャリアでワンワールドに加盟した。 もともとB767−200で日本にチャーター便を多数運航していた実績があったが、こともあろうに唯一の長距離機材であったその767を売却してしまった。 同時にブタペスト−ニューヨーク線も休止になり、現在はヨーロッパ内路線のみを運航。 しばらく日本で見ることもできないだろう(涙)。 ※航空協定締結国 |
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・ロイヤルブルネイ航空(B) ブルネイのナショナルフラッグキャリア。 関空開港から2,3年間乗り入れていた実績を持つ。 より需要のあるであろう東京に再就航をしてもらいたいもの。 ※航空協定締結国 |
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・南アフリカ航空(B) 南アフリカのナショナルフラッグキャリアでスターアライアンスに加盟した。 このエアラインも関空開港から2,3年間ヨハネスブルグ−香港線を延長する形で乗り入れていた実績がある。 エジプト航空と並びアフリカ随一の競争力を持つエアラインだけに、日本にも本格就航を期待するもの。 ※航空協定締結国 |
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・サウジアラビア航空(B) サウジアラビアのナショナルフラッグキャリアで2006年9月から関空に就航を果たしたものの、3週間で運航が休止されてしまった。 はっきりした理由はわからないが他の路線は平常に運航しているだけに、仕切り直して日本に定期就航をしてほしいエアライン。 |
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・TAPポルトガル航空(C) ポルトガルのナショナルフラッグキャリア。 他のヨーロッパのメガキャリアと比べると多少地味なイメージがあるが、南北アメリカ・アフリカにもネットワークがありアジアに進出してくる可能性もゼロではないと思われる。 |
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・エアリンガス(C) アイルランドのナショナルフラッグキャリアでワンワールドメンバー。 A330を大西洋線に就航させているがアジア方面には進出しておらず、すぐに乗り入れをする可能性は低い。 |
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・USエアウェイズ(C) アメリカのエアラインでアメリカウェスト航空と合併、その規模を拡大した。 ユナイテッド航空と同じスターアライアンスに属するため、しばらくは日本就航は望めないかもしれない。 が、フィラデルフィア−北京線に就航を発表するなど東アジアにも目を向けている。 ※航空協定締結国 |
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・キングフィッシャー航空(C) インドの新興エアラインで徐々にネットワークを拡大している。 A380も発注しており、今後の発展が期待される航空会社。 ※航空協定締結国 |
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・TAMブラジル航空(B) ブラジルの国内線で発展してきたエアラインで、近年ではB777やA330を使用してヨーロッパや北米など長距離国際線にも進出するようになった。 VARIG・VASPといった大手が倒産しているブラジルにおいて、現在ブラジル最大のエアラインと言える。 ブラジルはBRICSの一翼を担いEMBRAERの本社もある国で、もともと移民も多く日本との結びつきの強い国である。 先ごろ経営の悪化しているJALが運休を発表しているので、その需要を引き継ぐかたちで日本に来てもらえないだろうか。 ※航空協定締結国 |
ただ、多くの国が日本に乗り入れを希望し始めた2,30年前とは違い、現在のアジアには経済発展をしてきた多くの国家のライバル空港が存在している。 ソウル・インチョン空港、上海・プドン空港、香港・チェクラプコク空港、バンコク・スワンナプーム空港、クアラルンプール空港、シンガポール空港などのハブ空港がひしめき、他大陸のエアラインはどこに乗り入れるかよく吟味しているように思われる。 地の利からいえば、東南アジアはとても有利なところで、ASEAN諸国は相互に経済協力をしてお互いを高めあっていることもあり、特に需要のある香港・バンコク・シンガポールを中心に全大陸から多数のエアラインが乗り入れている。東南アジアの大都市にすぐ乗り継げるし、南回りルートやカンガルールート(ヨーロッパ〜オセアニア路線でドル箱路線と評される)の中継地としてもよく利用されるからだ。 日本はアメリカと東・東南アジアの中継地点としてノースウェスト航空・ユナイテッド航空などがハブにしているが、現在は航空機の航続距離の延長にともない北米−東・東南アジア間のノンストップ便が増え、以前ほど重要な中継地点ではなくなってきている。 これからは、本当に日本に需要のある会社しか乗り入れてこないであろう。 そして、同じ東アジアで北米からノンストップ便が飛ぶソウル、上海は直接の競争関係にあるといえる。 以前ほど経済的に日本がアジアで注目される存在ではなくなっていることが気がかりだが、これからも多くの外国エアラインが日本の空港に乗り入れることを願ってやまない。 |